死後離婚って何だ?
1「死後離婚」という用語にびっくり
離婚は配偶者の生存中でなければできない。それなのに「死後離婚」という文字をネットで見かけてびっくりした。
養子縁組の解消,つまり離縁は「死後離縁」という制度がある。民法811条6項に規定がある。しかし,離婚についてはこのような規定がない。
ネットをよく見てみると,配偶者死亡後の姻族関係終了の意思表示(民法728条2項)のことであった。
2 姻族関係終了の意思表示
姻族とは婚姻により形成される親族関係,つまり配偶者を介した親族関係である。結婚すると姻族関係が生じる。離婚すると姻族関係がなくなる(民法728条1項)。配偶者の死亡によっては当然には姻族関係はなくならない。
3 姻族関係終了の意思表示のやりかた
姻族関係終了の意思表示は,具体的には姻族関係終了届を提出することで行う(戸籍法96条)。
4 姻族関係終了の効果
何の目的で姻族関係を終了させるか。心理的な目的が一番大きいのであろうが,法律的な効果はどうなのか。以下,まとめてみた。
Ⅰ 扶養義務を完全に免れる
同居の親族に関する730条,特別の事情のある場合の877条の規定により姻族関係にある者に扶養義務が生じることがある。
Ⅱ 成年後見申立人の資格
申立人になれなくなる(民法7条,11条,15条)。
Ⅲ 刑法の関係
犯人隠避・証拠隠滅105条・・・「親族」に対しては刑の免除することができる。
窃盗244条・・・「同居の親族」に対しては刑が免除される。
詐欺・背任・恐喝251条・・・「同居の親族」に対しては刑が免除される。
横領255条・・・「同居の親族」に対しては刑が免除される。
盗品譲受257条・・・「同居の親族」に対しては刑が免除される。
Ⅳ 効果がないもの
直系姻族間で婚姻ができないことは,姻族関係終了届をしても変わらない(民法736条)
証言拒絶権も変わらない(民事訴訟法196条,刑事訴訟法147条)。